プレファンレンス向上による数値をベースとした戦略論とは?

プレファンレンス向上による数値をベースとした戦略論とは?

本のまとめ

▼読んだ本は?
確率思考の戦略論
森岡 毅さん, 今西 聖貴さん
http://amzn.asia/5jUH2z9
▼ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)の成長とは?
■2011年からの5年間で60以上ものプロジェクトを成功し、660万人の集客を完了
■ハリーポッターをオープンさせた2014年度には年間集客1,270万人、続く2015年度には1,390万人を達成

▼USJの連続的な成功の理由は?
■勝てる戦いだけを行ったから
■戦略においてコントロールできる領域に経営資源を集中したから
■「なぜ?」を繰り返すことで表面的な現象の奥底にある本質を解明したから
■業界における市場構造を理解し、成功確率の高い企業戦略を取ったから
■USJというブランドへの総投票回数を増やすため「映画だけのテーマパーク」から「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」にコンセプト変更したから

▼サービス/製品の一つのカテゴリーにおける市場全体の売上を計算する方法は?
■以下3つをかけ合わせた合計値が市場全体の総売上となる
【×1】サービス/製品の延べ購入回数
【×2】サービス/製品の1購入辺りの平均購入個数
【×3】サービス/製品の平均単価

▼自社ブランドの売上を決定する7つの要素は?
■売上を左右する以下7つの要素をかけ合わせるとブランドの売上が算出できる
【1】自社ブランドの「認知率」はいくつか?
【2】自社ブランドの「配荷率」はいくつか?
【3】自社ブランドの「過去購入率」はいくつか?
【4】自社ブランドの「エボークト・セットに入る率」はいくつか?
【5】自社ブランドの「1年間に購入する率」はいくつか?
【6】自社ブランドの「年間購入回数」はいくつか?
【7】自社ブランドの「平均購入金額」はいくつか?

■例えば以下条件の場合「0.75×0.6×0.6×0.6×0.6×1.3×420=35億」となり、年間売上は35億円と仮定できる
【1】全世帯の75%が自社ブランドを「認知」している
【2】そのうちの60%に対し「配荷」され、物理的に購入できる
【3】そのうちの60%が「過去購入」したことがある
【4】そのうちの60%が「エボークト・セット」に入れた
【5】そのうちの60%が「1年間に購入」した
【6】自社ブランドの「年間購入回数」は1.3回
【7】自社ブランドの「年間購入金額」は420円

▼自社ブランドの売上を伸ばすために経営資源を投下すべき対象は?
■コントロールしやすい、以下3つの領域に経営資源を集中すべき
【1】自社ブランドへの「プレファレンス」を高めること
【2】自社ブランドへの「認知率」を高めること
【3】自社ブランドへの「配荷率」を高めること

▼市場構造を支配する「プレファレンス」とは?
■消費者のサービス/製品等のブランドに対する相対的な好意度(好み)のこと
■プレファレンスは「ブランド・エクイティ/価格/製品パフォーマンス」の3つによって決定される
■自社のサービス/製品が購入される回数はプレファレンスにより決定され、プレファレンスが高ければ結果的に自社ブランドの市場シェアが増加することとなる

▼プレファレンスを左右する「ブランド・エクイティ」とは?
■顧客がそのブランドに対して抱くイメージを「資産価値」として表したもの
■以下のようなブランド・エクイティの実例がある
【1】「夢と魔法の王国=ディズニーランド」に対して「絶叫パーク=富士急ハイランド」
【2】「白さ=花王洗剤:アタック」に対して「白くて除菌もできる=P&G洗剤:アリエール」
【3】西洋人とも、他のアジア人とも同じに見られたくないという日本人女性の潜在的なニーズに対して「日本の女性は美しい=TSUBAKI」

▼プレファレンスにより左右される消費者の購買行動順序とは?
【1】新しいサービス/製品を購入する場合、過去の購入経験を元に3~4程度の購入候補(エボークト・セット)となるブランドが予め消費者の頭の中に存在
【2】例えば、ある人のビールを買う場合のエボークト・セットはプレミアムモルツ/エビス/一番搾り/黒ラベルなど
【3】消費者は、おおよその年間の購入回数に基づき、このエボークト・セットの中からその日に購入するブランドを毎回ランダムに選択する
【4】どれを購入するかの確率は、エボークト・セットの中でプレファレンスの高いものから順番に50%,30%,10%,10%程度の確率で購入することが一般的に多い
【5】自社サービス/製品のプレファレンスが高まれば、消費者のエボークト・セット内において購入される回数(自社ブランドへの投票回数)が結果的に増加し、売上も増加することとなる

▼USJへの来園回数(投票回数)増加のための具体的な手法とは?
【1】ファミリー層からの総投票回数の増加
└新ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を最速で建設し、子供連れ家族からの投票回数を増加

【2】ハロウィーン・シーズンからの総投票回数の増加
└ゾンビでパークを埋め尽くす「ハロウィーン・ホラー・ナイト」を実施し、10月の投票回数を増加

【3】個別ブランドファンからの総投票回数の増加
└アニメのワンピースや有名ゲームに紐づく会場を建設し、各ブランドファンからの総投票回数を増加

【4】スリルシーカーからの総投票回数の増加
└若者を中心としたスリルを楽しみたい人向けの会場を建設し、各ブランドファンからの総投票回数を増加

▼「プレファレンス」を計測する「コンセプト・ユース・テスト」とは?
【1】コンセプトと呼ばれるブランド名/簡易説明/使用便益/パッケージ写真/価格などがのった商品広告のような紙を5~6ブランド用意(500~1,000人程度から意見を聞くことが一般的)
【2】用意する5~6ブランドは、できる限り調査する消費者のエボークト・セットに入っているブランドを用意
【3】コンセプトを見て購入以降を示したユーザーに対し、実際にブランドを使用してもらう
【4】使用後に以下など複数質問を用意し、答えてもらう
└どのブランドを買ってみたいと思うか?(プレファレンスに直結する最も重要な質問)
└それぞれのブランドを好きな順番は?
└それぞれのブランドを買う理由/買わない理由は何か?
└それぞれのブランドはあなたの期待に見合ったか?
└それぞれのブランドの1年間の購入頻度は何回程度か?
└それぞれのブランドの購入サイズはどのくらいが良いか?
└それぞれのブランドの1回の購入個数はいくつか?
└それぞれのブランドにどのような価値を感じたか?
└それぞれのブランドは他のサービス/製品との違いは何か?

▼プレファレンスを拡大する際の2つの方法とは?
【1】プレファレンスの水平拡大
└サービス/製品に対するファン数を増やすことで、ブランドへの投票総数を増やす方法

【2】プレファレンスの垂直拡大
└サービス製品に対するファン数は同一のまま、そもそもの一人あたりのブランドへの投票回数を増やす方法

※一般的には、マーケットを拡大するほうがコストが低いため【1】の手法が用いられることが多い

▼2つのタイプが存在する「認知率」とは?
【1】Aided Awareness(ブランド名で誘導されて計測された認知率のこと)
└例えば「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを知っていますか?」というブランド名を含む質問に基づく認知率のこと

【2】Unaided Awareness(ブランド名で誘導されずに計測された認知率のこと)
└例えば「テーマパークや遊園地のような集客施設として思い浮かぶブランドは何ですか?」というテーマパーク全体に対する質問に基づく認知率のこと
└Unaided Awarenessでブランド名が出れば消費者のエボークト・セットに入っていることになり、一番に浮かぶことを「第一ブランド想起率」と呼ぶ

▼顧客にブランドを届けるための「配荷率」とは?
■市場にいる何%の消費者がそのブランドを買おうと思えば物理的に買える状態にあるかの割合
■例えばシャンプーなどの場合「ドラッグストア」「大型スーパー」などを含め物理店舗として購入できる店舗を元に算出
■「都市部のドラッグストア」「郊外の大型スーパー」では購入層が大きく異なるため、訪れる顧客タイプに合わせて棚割りを最適化することにより「配荷の質」自体をを向上させることも可能

▼「製品パフォーマンス」を図る「シングル・プロダクト・ブラインド・テスト」とは?
【1】ブランド名を伏せて「洗剤」など製品カテゴリーのみを書いた白いパッケージを用意
【2】複数の白いパッケージを実際にグループの人々に使ってもらう
【3】複数質問を用意するが、最も重要なのは総合評価に対する質問に回答してもらうこと
【4】総合評価では「製品をお使いになって、あなたのお気持ちに最も近いものを非常に良い/良い/普通/あまり良くない/全然良くない」の5つの選択肢から人々に答えてもらう
【5】5段階の回答に対して「100,75,50,25,0」の加重をそれぞれの回答にかけて平均値を出す

思ったこと

ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)での5年連続での来園者数増加という実体験を元に、戦略において最も重要となるプレファレンス(消費者のブランドへの相対的好意度)の増加をどのように成し遂げるかについて書かれた本でした。

「戦略」と聞くと、実際に何を目的に行うのかも分からないまま闇雲にターゲティングやブランド価値の定義を行ってしまうこともありますが、洗剤を例に上げ、消費者の洗剤の総年間購入回数上限に対して、プレファレンスを上げることで自社ブランド洗剤への投票(購入)回数を増やすために、戦略を用いるのだということを明確化しています。

「熱を込めた戦略論」は色んな所で聞いたり読んだりすることがありますが、この本のように向上すべき数値をまず明確化し、そのために逆算して何をやっていくべきかを冷静かつ緻密に練り上げて書かれたいるものはあまり読んだことがなく、とても興味深かったです。

戦略を一つ立てるためには、きっと莫大なお金を投下することを考えれば、達成すべき数字を明確化することは当たり前のことです。あーでも数字言うのってなかなか怖くもありますね、でも言わなきゃな。

ありがとうございました!

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