今いる場所に安心せず、新しい機会を探す「信頼社会」に変わる日本

今いる場所に安心せず、新しい機会を探す「信頼社会」に変わる日本

「村社会」「企業の終身雇用」のように、固定された人間関係の中で存続してきた日本社会。それは、お互いが信頼しあっているという心によるものじゃなく、村の中で限られた人といるほうが、安心してやり取りができる「安心社会」として形作られてきたこと。

けれど今、たくさん海外の人や企業が入ってきていること。そして、インターネットを通じて世界中の人とリアルタイムにやり取りができるようになったことによって、いつも同じ関係の中だけで生きているには、失う機会が大きすぎる世界に変わってしまったこと。

そんな今の世界では、限られた集団の中での人間関係を意識しすぎているだけでは駄目なこと。もっと積極的に、新しい誰かと信頼を共有し自分の世界を広げていくことの重要性が、緻密な実験やアンケート結果に基づいて、描かれています。

ありがとうございました!

本のまとめ

▼読んだ本は?

■安心社会から信頼社会へ 日本型システムの行方
■山岸俊男(著)

▼「安心」と「信頼」の違いは?

■安心
└相手の自己利益にならないため、相手が自分に悪いことをしないだろうという期待のこと
└例えば、マフィアの世界では秘密を喋ると殺されるという仕組みにより、違法な話しをする上での安心が生まれる

■信頼
└相手の人格を評価したうえで、相手が自分に悪いことをしないだろうという期待のこと
└例えば、道で拾った財布を交番に届けた人という事実により、お金を盗まない人という信頼が生まれる

▼日本に存在する「安心社会」とは?

■安定した集団や関係の中で、勝手な行動を制御することで不確実なことを防ぎ、安心を生み出す社会
■心で判断するのではなく、仕組みとして相互監視・相互規制が存在し、結果勝手な行動を許さない
■集団主義的な考え方のもと、形成される
■集団の内部にとどまっている限り、安心して暮らすことができる
■閉鎖的な集団となるため、反対に集団外部(よそ者)に対する不信感を持つ傾向が強い

▼安心社会を形成する「コミットメント関係」とは?

■社会的な不確実・不安定さを回避するための「継続的な関係」のこと
■例えば「ヤクザ社会」では、自分の命の危険を回避するため、継続的なコミットメント関係を強める傾向がある
■例えば「終身雇用制」では、職や人を失うリスクを防ぎ、継続的なコミットメント関係を強める傾向がある
■結果「どのような場面で、相手が裏切る可能性があるか?」を正確に予測できるようになり、安心が生まれる

▼「信頼する人は騙されやすいか」を確認した実験とは?

【1】シナリオを用意
■車に乗っているAさんが、駐車場にあるあなたの車にぶつかってしまった
■Aさんが「当て逃げをするかどうか?」を判断してもらう
■15個の、異なる複数のシナリオを用意する
■一部のシナリオには「Aさんはお礼を言わない・並んでいる列に割り込む」などネガティブ情報を含む
■一部のシナリオには「Aさんが落とし物を届けていた・道端のゴミを拾っていた」などポジティブ情報を含む

【2】高信頼者・低信頼者それぞれにシナリオに回答してもらう
■高信頼者
└「社会には偽善が増えている」「みんな自分の利害を優先させている」等の質問に対し、同意しない人
└言い換えれば、一般的な人や社会を信頼する傾向が強い人

■低信頼者
└「社会には偽善が増えている」「みんな自分の利害を優先させている」等の質問に対し、同意する人
└言い換えれば、一般的な人や社会を信頼する傾向が弱い人

【3】調査結果は以下のようになる
■「ポジティブ・ネガティブ情報」が一切与えられていない時
└低信頼者より高信頼者が、Aさんを信頼する傾向がある

■「ネガティブ情報」だけが与えられている時
└低信頼者より高信頼者が、Aさんを信頼しない傾向がある

【4】予想に反して、低信頼者より高信頼者が、相手が信頼できるかどうかという情報に敏感に反応する
└つまり高信頼者は人を信頼している人が、きちんと情報を確認するため、騙されやすいわけではない

▼「高信頼者」と「低信頼者」が重要視することは?

■高信頼者
└「その相手が信頼できる人かどうか?」を意識する
└相手の立場に立って、相手が直面している状況を理解しようとする
└結果、相手をよく見極めた上で、その人への「信頼」を重要視する

■低信頼者
└「その集団の中での人間関係はどうか?」を気にする
└対人関係に不安を感じており、対人関係に積極的に対処できない
└結果、特定の集団の中に閉じたコミットメント関係による、集団としての「安心」を重要視する

▼日本人とアメリカ人だと、どちらが他人を信頼する?

■「たいていの人は信頼できると思いますか?」
└日本:26%が「はい」
└アメリカ:47%が「はい」

■「他人はスキがあればあなたを利用すると思いますか?」
└日本:53%が「はい」
└アメリカ:62%が「はい」

■「たいていの人は、他人の役に立とうとしていると思いますか?」
└日本:19%が「はい」
└アメリカ:47%が「はい」

■アンケート結果から、日本人よりアメリカ人のほうが、人を信頼する傾向が強いと考えられる

▼日本はこれからどう変わるべきか?

■これまで集団主義的な「コミットメント関係」に基づく、「安心社会」が形成されていた
■でも、現代ではコミットメント関係を深めるほど、反対に「機会費用」が増大するようになった
■機会費用とは、新しい関係を求めず、今の関係を継続してしまうことにより発生する不利益のこと
■「ビジネスのグローバル化」「インターネットの発達」などから、この機会費用はどんどん大きくなってきている
■そのため、これまでの集団を軸にした「安心社会」から、信頼を軸とした「信頼社会」に変わっていく必要がある
■信頼社会を形成するためには、情報を開示し、はじめてでもお互いを信頼できる仕組みが大事

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